4 くらしと祈り

 

「私たちの学区には,江戸時代から続いている行事があるのよ。」
「それは知らなかった。その頃の人々はどんな生活を送っていたのかな。」

 

人々の生きる営みをささえる心のよりどころは信仰であったといわれています。当時の信仰が,寺社を中心として,現在でも地域の人々の手で受け継がれているものがあります。このような活動は,信仰だけでなく,周辺地域との交流や経済的な結びつきを深める役割も果たしていたと考えられています。

 

⑴ 庶民信仰

①  庚申 ( こうしん ) 信仰〜庚申塚とし 青面金剛 ( しょうめんこんごう )

江戸時代にはたくさんの病気がありましたが,これらの病気は,人間の体内にいる惡い虫のせいだと考えられていました。この惡い虫は,60日に1回の庚申の日に天に昇り,その人間の悪行を神に知らせると信じられていました。庚申の日には一晩中起きてみんなで賑やかに過ごし,悪い虫が天に昇らないようにしようとしました。これが庚申信仰です。病気を退治する青面金剛という神の石碑とともに柏市内には,その記念としてたくさんの庚申塚が建てられています。

 

百庚申(南増尾)

 

② 信仰と旅

江尸時代の旅は,宗教的な目的を装って行われていました。名主などの村役人が御用筋で江戸に出るこどはあっても,一般人が自由に脱国するこどは許されていなかったためでしよう。しかし,江戸中期以降は,村人は出羽三山参詣などを理由に,連れだって旅に出ました。大山講•富士講•秩父札所まいり,伊勢参詣などが盛んに行われていました。その記録は,地域の寺社に石碑として残されているものがあります。

富士塚(「地主神社」篠籠田)

 

⑵ 市域の民俗行事について

ここでは,江戸時代から現在まで伝えられている市域の民俗行事をいくつか紹介します。

① 市域の民俗行事について

 

現在柏市域で行われている東葛飾・印旛大師は,「 南相馬 ( みなみそうま ) の送り大師」ともいわれており,周辺の3市を含めて広域な民俗行事として毎年行われています。一番から八十八番までの 大師堂 ( だいしどう ) (札所)※1が,各地区の寺社• 祠堂 ( しどう ) に設けられ, 弘法大師 ( こうぼうだいし ) の石像と番ごとの 御詠歌 ( ごえいか ) (仏をたたえる念仏歌)が納められています。

送り大師は,例年5月1日から5日間,大師講の団体で巡拝します。一般の遍路と違うのは, 弘法大師 ( こうぼうだいし ) の 御影 ( みえい ) を 笈 ( おい ) (仏像を入れ背おう箱)に納めて,その年の 結願 ( けちがん ) ※2にあたる地区の寺院 住職 ( じゅうしょく ) が 先達 ( せんだつ ) となり, 講員 ( こういん ) がこれに従って,巡行する点です。各地区の寺院からは,宗派を問わずこれに参加し,また講員の宗派も多様であるこども特徴的です。起りははっきりしませんが,比較的古い記念の石碑は1808年(文化5年)のものもあり,この頃から行われた可能性も考えられます。

 

 

送り大師の行列は,先達※3・大師 御影 ( みえい ) を前後に,大師組合役員•御詠歌連中と続きます。「 南無大師遍照金剛 ( なむだいしへんじょうこんごう ) 」ど書かれた 幡 ( はた ) をひるがえし, 法螺貝 ( ほらがい ) を吹き, 遍照金剛 ( へんじょうこんごう ) を唱えながら進みます。

※1:札所…参拝のしるしとして,札を納めたり受け取ったりする所。
※2:結願…日数を決めて行った法会や願立てなどの予定日数が満ちること。
※3:先達…道などを案内すること。案内人。また,指導者。

 

②  船戸 ( ふなど ) のおびしゃ

 

「おびしゃ」は,もとは弓を射て的に当てることで,その年の 豊穣 ( ほうじょう ) を祈る行事です。船戸のおびしゃは,現在は, 的射 ( まとい ) は行われていませんが,古い形態を持つ踊りとして貴重な存在です。船戸のおびしゃは,江戸時代の初め頃から始まったそうです。毎年1月に行われていましたが,現在は, 1月20日直前の日曜日に行われています。かつては「 天満宮 ( てんまんぐう ) 」で神事を行い,その後4区域の旧家4軒で踊りと酒宴が行われていましたが,1918年からは,「 医王寺 ( いおうじ ) 」で神事・踊り・酒宴が行われるようになり, 1994年からは「船戸会館」で行われるようになり現在に至っています。

 

③  篠籠田 ( しこだ ) の三匹獅子舞

 

獅子舞の始まりは,徳川五大将軍綱吉の頃の元禄時代といわれ,現在は毎年8月16 日に西光院境内で行われています。篠籠田の獅子舞は,竜神をかたどる「 竜頭 ( りゅうず ) の獅子」で,祖先の霊をなぐさめ,五穀 豊穣 ( ほうじょう ) と家内安全を祈念します。獅子舞は,西光院の 施餓鬼 ( せがき ) の日に毎年行われてきましたが,年々獅子が不足するようになったため,1974年篠籠田の三匹獅子舞保存会が結成されました。その後,若い人たちの加入者も增え始め,現在に至っています。

 

④  十二座神楽 ( じゅうにざかぐら )

 

例年10月17日, 塚崎 ( つかざき ) 地区にある神明社の大祭に神楽殿で奉納される神楽です。古代神話をもとにした神楽舞で, 恵比寿 ( えびす ) , 大蛇退治 ( おろちたいじ ) , 天岩戸 ( あまのいわど ) などの十二の舞曲からなる荘重な舞楽です。 塚崎 ( つかざき ) 地区の長男によって継承され,古い伝統があると伝えられています。

 

⑤ 手賀 囃子 ( はやし )

 

手賀 囃子 ( はやし ) は,地元の神社の神である「アンバ様」の祭礼で奉納されるお 囃子 ( はやし ) です。この祭りは, 興福院 ( こうふくいん ) から 兵主八幡 ( ひょうしゅはちまん ) 神社までみこしや 山車 ( だし ) が引かれ,その際にこのお 囃子 ( はやし ) が披露されます。このお 囃子 ( はやし ) は笛と太鼓にあわせて面をかぶった舞手が楽しく踊るもので,能をもどにした民俗芸能どなっています。

 

⑥  大室 ( おおむろ ) の盆綱引き

 

 夏の夜, 大室 ( おおむろ ) 地区で行われる行事に盆綱があります。江戸時代,徳川は五代将軍綱吉の1699年,若者たちが青ガヤなどを刈り集めて太い綱をつくり,墓六ツの刻限(午後6時)を合図に東の組と西の組に分かれて綱引きを行い,その年の吉凶を占ったのがはじまりといいます。

 

⑦  八朔 ( はっさく ) 相撲

 

徳川八代将軍吉宗の時代から富勢地区に伝わる八朔相撲。五穀 豊穣 ( ほうじょう ) を願うとともに,働く農民たちの慰安を兼ねて,八朔(旧暦の8月1日)に布施弁天の境内で行われたといいます。八朔には古く農家で新穀の贈答や豊作祈願などの行事が行われ,後に一般化して贈答の習慣を生みました。

 

歴史に挑戦

 

私たちの身近な生活から,江戸時代から伝わるものを探してみよう。